人は眠りで寿命をコントロールできる

冬眠とは、恒温動物が活動を停止し、体温を低下させて食料の少ない冬季間を過ごす生態のことである。

冬眠する動物は、冬季の寒さや食料不足から身を守るために、冬眠という生態を進化させたと考えられている。冬眠中は、体温が通常時の1/3から1/10程度まで下がり、心拍数や呼吸数も大幅に減少する。これによって、エネルギー消費を大幅に抑制し、冬を越すことができる。

冬眠する動物は、大きく分けて「持続型冬眠」と「中途覚醒型冬眠」の2つに分類される。持続型冬眠とは、冬の間ずっと冬眠状態にある動物のことで、クマやリスなどがこれに当たる。中途覚醒型冬眠とは、冬眠中に何度か短期間覚醒する動物のことで、コウモリなどがこれに当たる。

もし冬眠ができれば人類の未来が変わるのは間違いない。

人は冬眠できるのか

今までの人類の歴史で冬眠できる人間というのは確認されていない。つまり人は冬眠できない。ところが、まず間違いなく人間は冬眠ができる。その根拠を2つ紹介する。

まず一つ目は事故的に冬眠した人の話である。冬山で遭難したが、食料も水もない環境で1か月後に無事生還した人や水中に閉じ込められて数時間後に助けられてなんの問題もなく生存できた人もいる。これらは、低温下で起きた事例であり、通常では生存できない環境から生存したという結果から、冬眠状態であったのではないかと言われている。

2つ目の根拠は霊長目でも冬眠できる生き物がいるということである。地球上の哺乳類はすべての目で冬眠が確認されている。霊長目のサルでは、マダガスカルに生息しているフトオコビトキツネザルが冬眠することが確認されている。つまり、サルも冬眠することができる。これらの根拠から、人間も冬眠するだけのポテンシャルは持っていると考えられている。

冬眠の前に睡眠

冬眠の話の前に、冬眠の一歩手前の段階、睡眠についてもう少し理解を深めておく。人間の脳には3つの状態がある。覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠である。簡単にいうと覚醒は起きている、睡眠は寝ているである。この覚醒と睡眠の差に関係しているのが、神経伝達物質のオレキシンである。人間はオレキシンがたくさん出ているときは起きていて、オレキシンが出なくなると眠る。オレキシンという物質が人間の覚醒と睡眠に関係しているということが、1998年に桜井武教授によって発見された。この睡眠と覚醒の関係を研究している過程で、睡眠のもう一歩先へ到達することになっていく。

冬眠をコントロールする

睡眠の研究をする過程で、マウスの実験中、新規の神経ペプチドを発現する神経細胞群(Q神経)を興奮させると冬眠状態になることを2020年に発見。人工的に冬眠状態にすることが可能であるということが証明された。冬眠と睡眠の大きな違いはエネルギーの消費量である。冬眠の場合、体温や心拍が低下し、エネルギーは生命維持のための最小限しか使われない。そのため細胞分裂の回数が少なくなり、劣化を遅らせることも可能になる。

人工冬眠 する

人を人工冬眠させて何のためになるのか、現時点では2つの目標がある。一つは医療である。急性期の患者を人工冬眠させることで、代謝を落とし、ダメージの軽減や治療までの時間稼ぎが可能になり、救える命が増えるかもしれない。

もうひとつは宇宙である。人が火星に行く場合、おおよそ片道6~9か月の時間がかかると言われている。この時間を人工冬眠することで、酸素や食料を減らすことが可能になり、積載量を減らすことができる。また人口冬眠をすると細胞分裂が遅くなり、宇宙飛行士の体へのダメージを最小限に抑えることができる。宇宙空間で細胞分裂が起こると宇宙線によりDNAに損傷が発生する可能性が高く、癌などになるリスクが高まる。そのため、長期間の宇宙空間移動では人口冬眠は必須になる技術といえる。2030年の火星探査時には実用化できるように研究が進んでいる。

投資と人口冬眠

宇宙研究や急性期の医療など、高度な環境での人口冬眠から、一般へ普及する人口冬眠の民営化が進めば、気軽に人口冬眠ができるようになり、寿命の概念が大きく変わるときがくると予想される。極端に言えば、人口冬眠をしている親を子供の細胞劣化が追い越し、寿命が逆転するというようなことも起こり始める。そんな風に気軽に人口冬眠ができるようになれば、株を購入した後に人口冬眠して、20年後に目覚めたら大金持ちなんてこともありえる。

人間は欲深い生き物なので、我慢ができない。例えばテスラの株を安いときに購入していたとしても2倍ぐらいになったら持ち切れずに売却してしまう人がほとんどだ。どんなに上昇しても我慢し続けて、例えば100倍になってから売却できる精神力を持っている人はそうそういない。だから、成長市場の株を購入して、人口冬眠してしまうというのが大金持ちになる最短ルートになるかもしれない。

ターゲットは2030年の火星探査になると思われる。人口冬眠に関連しそうな企業を探して投資しておくといいかもしれない。

Comment